塗装工事における下塗りの重要性
2022/04/08
塗装工事では幾つかの工程を経て作業を完了させます。
塗る対象となる下地(素地)について必要なら補修し(下地補修)、整え(下地調整)、洗浄やケレンを行って塗装に適した清掃面にします。
これらが塗装する前の準備段階。塗装工事による効果を十分に発揮するために極めて重要です。
洗浄やケレンについては塗装工事の作業工程の一部として扱われる事もありますので、この後少し触れますが、
下地補修や下地調整については今回は割愛します。
一般的に塗装は2~3回塗りとなります。外壁塗装だと3回塗り、仕様によってはそれ以上の回数塗り重ねます。
1.高圧洗浄機による水洗いもしくはケレン・清掃・・・素地の埃やコケなどを落とし、塗料の密着を確保します。
2.下塗り・・・素地と仕上げ塗料の密着性を高める
3.中塗り(上塗り1回目)・・・美観形成・保護機能その他
4.上塗り(上塗り2回目)・・・美観形成・保護機能その他
上記がごくごく一般的な外壁塗装の工程です。中塗り・上塗りは基本同じ塗料となります。
下塗りについて
一般的に溶剤系塗料は密着性に優れ、水性(水系)塗料は密着性に劣るとされます。
現状外壁のような大きな面積を塗装する際は匂いその他の観点から水性塗料を用いるのが通常であり、
外壁の塗り替えをするにはしっかりと下塗りを入れる必要があります。
それ自体接着力の乏しい水性塗料をそのまま下地に塗布しても、そう遠くない将来剥がれてしまうかもしれません。
それではいくら高機能な塗料を塗ったところで意味はありませんからね。
下塗りは仕上げ塗料の密着性を助け、吸い込み押さえ、十分な塗膜の形成を助けます。
素地の状態によって「シーラー」または「フィラー」を用います。
ところで、外壁塗装においては上記シーラーまたはフィラーを用いますが、
対象の素材によって下塗りの種類も異なる事をご存知でしょうか?
分かりやすいのが鉄です。鉄製の手摺や格子など鉄でできた個所を「鉄部」と呼んでおりまして、
その鉄部塗装における下塗りは「錆止め(サビ止め)」という事になります。
錆止めについて時々誤解されるのが、錆止めはあくまで「錆の発生を防止する」という事であって、
現在錆びているものを除去したり、改善するものではありません。
鉄部の錆はカワスキと言った道具やサンドペーパーで除去するほかなく、
ケレン・清掃→さび止め塗布
と言う工程を経て仕上げ塗装に移ります。
下塗りの種類はざっくり以下の通り
1.シーラー・・・下地(素地)を覆い、下地を整えるとともに仕上げ塗料の接着性を高め、素地の吸い込みを押える事によって仕上がりを美しくします。
2.フィラー・・・粘度が高く(粘り気があり)一定の厚みをつける事のできる下塗り材です。下地(素地)の隙間を埋め、表面の凹凸や小さなクラックなどを補修・埋めることができ、滑らかな表面を作る事ができます。塗膜に弾性がある微弾性フィラーもあります。
3.プライマー・・・もともとは最初に塗られる塗料という意。密着性を高める接着プライマーや、鉄材などに塗る防錆プライマーなど。
4.サーフェイサー・・・下塗り材の一種で表面を均等化・平坦化するための塗料。下塗り材と、仕上げ材との中間に塗ることで、表面の小さいキズや凸凹を埋め、滑らかに調整したり、ムラ無く仕上げる効果を持っています。
5.錆止め(サビ止め)・・・鉄部における下塗り材。ケレン作業で錆を落としてから塗布。錆びている箇所だけでなく塗装面全体で塗る必要があります。
シーラーとは
seal(塞ぐ、覆う)が語源。下地(素地)を覆うための塗料。下地を整えるとともに仕上げ塗料の接着性を高め、素地の吸い込みを押える事によって仕上がりを美しくします。現状の下地の状態が比較的良好な場合に用います。水性シーラー、溶剤シーラー、シミ止めシーラー、浸透性シーラーなど種類豊富で、各メーカー、各商品ごとに指定・専用のシーラーがあります。また、屋根塗装で用いられる場合、遮熱性能を持ったシーラーなどもあります。色は無色透明あるいは乳白色が一般的。既存の色より濃い仕上げ塗料を塗る場合などには乳白色のシーラーを用います。透明なシーラーでは塗装後わずかに濡れ色になります。
エポキシ樹脂やカチオンなど接着性に富んだ成分を含み、言わば両面テープのような働きで仕上げ塗料の密着を助けます。
フィラーとは
fill(埋める、満たす)が語源。シーラーより粘度が高く(ねばっとしており)、塗ると厚みが出る事から、下地(素地)の状態が悪く、表面に
凹凸があったり、小さなクラックがあるような場合に用い、表面を滑らかに整えます。塗膜に弾性があるものを微弾性フィラーと呼びます。
下地を強化する場合にはマスチックローラーという特殊なものを使い、模様(パターン)をつける事もあります。塗膜脆弱部補修において、肌
合わせをする場合にも用いたりします。
プライマーとは
primary(最初の)が語源。「最初に塗る塗料」として下地(素地)と仕上げ塗料の密着性を高めます。
建築だとシーリング工事や防水工事における下塗り材と言った方が一般的です。
塗装工事では塩ビやアルミなど特殊な対象に塗る際に下塗り材かあるいは床の防塵塗装などでも用いられます。
サーフェイサーとは
surface(表面)が語源。下塗り材の一種で表面を均等化・平坦化するための塗料。下塗り材と、仕上げ材との中間に塗ることで、表面の小さ
いキズや凸凹を埋め、滑らかに調整したり、ムラ無く仕上げる効果を持っています。
錆止め(サビ止め)とは
鉄部の錆の発生を予防し、併せて密着性を高める下塗りとしても用いられます。
錆の発生のメカニズムは水や酸素に触れた鉄が酸化する事によって生じます。
そして鉄の酸化とは鉄の表面から電子が失われる事なので、鉄の表面を絶縁(電気を通さない)物質で被う事が有効です。
この点エポキシ樹脂はその効果として「絶縁」と密着性向上を有するため、錆止めの成分として活用されています。
以前は錆びている部分のみに錆止めを塗る「タッチアップ」による下塗りが行われたりもしましたが、
それだと鉄表面全体を絶縁する事にならず、甚だ不十分な施工方法と言えるでしょう。
鉄部の下塗りとして当然の如く全体にしっかりと塗布するのを基本とします。