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日本の気候と建築~雨仕舞(あまじまい)と部位~

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日本の気候と建築~雨仕舞(あまじまい)と部位~

日本の気候と建築~雨仕舞(あまじまい)と部位~

2022/06/07

雨仕舞(あまじまい)は水が高き所より下り落ちる性質を利用し、

  1. 出来る限り雨水を建物に当たらせない、内部に入り込ませない
  2. 雨水が入り込んでも抜け出す構造とし、長く留まらせない
  3. 万一に備え防水紙を貼り、水の浸入に備えるが、水が排水するまでの経路を確保する納まり

とまとめる事ができます。

「防水」と似てはいますが、水密性の点で方向性が異なります。

是非前回の記事「日本の気候と建築~雨仕舞(あまじまい)~」でご確認ください。

今回は家屋に設けられた庇や水切りなどの部位について雨仕舞との関係と共にご説明します。

屋根と勾配

雨仕舞は建物が雨に打たれた時、どのように排水させるかの仕組み作りです。

となると、スタート地点は建物の最も高い部分である屋根という事になります。

「排水」と一言で言っても経路は一つではありません。

雨水の大部分は排水経路へと誘導し、少量については水切りを使って地面に落下させ地面に流したり染み込ませます。

屋根や屋上は割と大きな平面ですから雨水も大量に出ます。

ですから傾斜をつけ自然に排水口に向かうように作られています。

傾斜の付いた屋根から流れ落ちる雨水を軒樋(のきどい)が受け、竪樋(たてどい)から排水させる。

一見平らに見える屋上も、実は中央が高く、排水溝周りが低くなっています。

排水口が詰まるなどしなければ自然に流れ排水される構造となっているのです。

一般に屋根は傾斜が大きいとトラブルが少ないものです。

強風によって水が吹きあがる際も傾斜が緩いより平らに近い屋根程ほど内部に水が入りやすく、

傾斜がきついと入りにくいからです。

水切り、防水紙、シーリング

雨仕舞においては「水切り」「防水紙」「シーリング」の三つが重要になります。

水は「伝う」ものです。上述したように傾斜をつけて流し落とすには、どこかでスパッと水を切らなければなりません。

そこで用いるのが「水切り」になります。

屋根の軒先水切りやケラバ水切り、窓周りの窓水切り(サッシ水切り)、サイディング用土台水切りなど、

特に名称がなくとも、要所要所で板金処理で水切りを設けます。

「水が当たる→流す→切る→集める(排水)」までが一セットです。

もし水切りがなければ、水はそのまま材の裏側に回るか、壁を伝ってしまいます。

しつこいですが雨に当たらせず、入り込ませずです。

単純に言えば傾斜の途中で急に垂直にすれば真下に方向づけられるというのが水切りの発想です。

建物をよく観察すると至る所に傾斜と垂直の組み合わせがある事がわかるはずです。

次に防水紙についてです。

防水紙はルーフィングと置き換えた方がわかりやすいでしょうか。あるいは防水シートと呼んでも差し支えありません。

水はただ上から下に落ちるものではありません。時に下から上へと流れる事もあります。

つまり、ほとんどの場合上から下へと流れ下るのに、強風が吹けば屋根を上ったりもします。

こうした想定外の動きに備えるのが防水紙です。雨仕舞が不十分でうまく機能しない場合への備えでもあります。

入り込まないはずの水がほんのちょっと入り込んでも、「安心してください、防水紙張ってますから!」となるわけです。

と言うわけで、ごく少量なら入っても大丈夫なように備えているわけですが、

あくまで入っても少量という線は守らなければなりません。

そこで、シーリング材を使って隙間なんかをしっかり埋めて、「できるだけ水が入らない」構造にします。

破風と鼻隠し

日本建築では同じ部材でも用いられる部位によって名称が変わります。

その一例が破風(はふ)と鼻隠し(はなかくし)です。

本を広げたように合わさる屋根を「切妻屋根(きりづまやね)」と言います。

上の写真で赤〇をした部位を破風あるいは破風板と呼び、緑〇で囲った部位を鼻隠しと呼びます。

どちらも地面に対して垂直に取り付けられ、軒を塞ぐフタの役割と共に水切りとしても働きます。

破風は風を破るという字の通り風除けとして屋根を守り、軒と共に屋根に対する防火の役割を持ちます。

また、屋根の形状によっては軒樋を取り付けるための下地にもなります。

鼻隠しは垂木(たるき)の先端を固定し屋根の強度を保つとともに目隠し、雨除け・風除けの役割を果たします。

切妻屋根では軒樋が取り付けられるのは破風ではなく鼻隠しです。

破風と接するのがケラバ水切り、鼻隠しと接するのが軒先水切りです。

傾斜と垂直で水を真下に落とします。破風、ケラバ水切りからの水の落下は少ないですが、

鼻隠し、軒水切りからは大量の水が落下しそれを軒樋が受けます。

霧避け庇(きりよけひさし)

雨を防ぐ目的で窓の上に作られた出幅の小さな庇を霧避け庇(きりよけひさし)と言います。

単に霧除けや庇と表現する事も多いです。

窓に傘をつける事で、それほど雨量がなければ窓を開ける事もできますし、

ちょっとした日除けや雨除けとしても役に立ちます。

窓サッシは設置当初は問題なくても、経年劣化でパッキンなど部材が傷むと漏水する事があります。

特にサッシの上端は壁を伝う雨水が溜まりやすく、案外トラブルが起きやすい構造をしています。

それでも庇があれば多少部材が劣化しても、こうしたトラブルを回避できます。

また、控えめに張り出しているだけでも割と大きな範囲で雨が当たらずに済むので、

思っている以上に雨仕舞としての効果を持っています。

かつては塗装工事の内訳に「霧除け塗装」の文字が躍っていましたが、

最近の建物の造りだと霧除けを設けないお家も増えましたね。

見た目にすっきりとしたデザインが好まれる傾向がありますが、

もう一度こうした雨仕舞について考えてみてもいいのではないでしょうか。

雨樋(あまどい)

雨どいは主に横、縦、集水器で構成されます。

多くは塩ビ(塩化ビニル)制で、いかにも排水管と言った円筒形の物から、半月形、角型とあります。

横向きの(地面と水平の)樋は軒樋あるいはまんま横樋と呼び、屋根やバルコニーの水が落とし込まれます。

半月あるいは角型の物が多いです。

その後集水器(集水桝)で水を集め、地面に対して垂直に伸びる竪樋を流れて排水されます。

排水のされ方は地面にそのまま流すやり方や、排水管に直結し直接排水するやり方、浸透桝に流し込むやり方があります。

この雨どいですが、恐らく皆さんが思う以上に大きな役割を果たしています。

これまでに何度となく雨どいがらみの漏水を目の当たりにしてきました。

特に近年のような異常気象では想定を超える雨量がより身近となっております。

雨どいが取り付けられてないせいで、屋根から大量の雨水が流れ落ち、漏水に至ったという物が、

雨どいはあってもキャパシティを超えオーバーフローしてしまって漏水するという事にもなり得ます。

極論を言えば水さえ触れなければ漏水はしないわけです。

ですから、いかに水を触れさせずに排水できるかが極めて重要だという事なのです。

屋根の傾斜の下で水を受ける樋があるか?樋の排水能力は十分か?

途中詰まったりしていないか?破損したりしていないか?

正規の接続部材を用いてるか?樋の勾配は取れてるか?変形あるいはたわんでいないか?

こうした事を改めて点検してみると良いかもしれませんね。

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