塗り替えリフォームの100点を目指して
2022/05/05
外壁や屋根などの塗り替えリフォームにおいて、それぞれ使用する塗料の性能を遺憾なく発揮し、
100点満点の工事を行うにはどうすれば良いでしょう?
カタログに記載された耐久性その他の性能を100%発揮するのは簡単ではありません。
その成否は施工手順を守り、適切な環境の元、適切に施工する工事の担い手側に多くの場合委ねられるのです。
施工手順とは
施工手順は言わば工種(工事の種類)ごとに定められた施工についてのマニュアルです。
工種が違えば内容も異なるのが当たり前です。
ですから各工種においてどんな順序で作業を進めていくのかはとても重要です。
全部で12の過程があるとして、そのうちの一部が抜けたり、順序が前後逆になったらまずいですよね?
意味や理屈があっての順番、全過程なのですから。
手順が守られて初めて、期待される性能が発揮されるというのはご理解いただけるでしょう。
ではこの手順。どこに書いてあるのでしょうか?
実はこれ会社毎に独自に定める場合がほとんどです。
世の中には「仕様書」という物がございまして、
各省庁、各種団体により、あるいは各メーカーが各商品ごとに標準的な仕様を定めております。
これを元にゼネコンやより規模の小さい各会社がそれぞれ手順書を作成します。
(ただし全会社に手順書があるわけではなく、小規模だとないのが普通です。)
手順書は作業を行う各職人一人一人が、均一な施工を行うためのガイドラインなのです。
「なんとなくこうやってたから」というように各自の判断に任せていたら、
作業を担う人や企業ごとに施工内容が変わってしまい、品質もマチマチになってしまうでしょう。
塗料や防水材、シーリング材などの建材の性能を比較検討する機会は多いですが、
それはあくまで100点満点の施工がなされた場合に初めて発揮される事を、
忘れてはなりません。
実際100点満点の施工はなかなかに難しいものです。
ちょっと気を抜けばすぐに失点してしまいます。
天気や環境など外部要因による影響を受けるものですから、
高得点で施工を均一化する努力こそ重要なのだと言っておきましょう。
ではどうすれば失点しないで済むのか?高得点を目指せるのか?
その答えの一つが「作業手順」を守る事なのです。
カタログの裏側を見よ!
カタログには性能を発揮するために必要な事項がしっかりと記載されています。
ただ、どうしてなのでしょう、重要な事なのに文字が小さい。
目立つのは「優れた耐久性!」などと言った優秀な性能や目を引く特色ばかり。
逆を返すと多くの人にとってそうした性能面、特色が気になるという事なのです。
だがしかし、だがしか~~しです!
小さく書かれたり、裏面などの見にくい所に書かれた情報を決しておろそかにしてはなりません。
「標準仕様」やそれに類する項目は特にです。
100点ないし高得点を目指す重要性は前述した通りです。
高性能や特色ある個性を発揮するにはこれらが決定的に重要なのですから。
希釈量と塗布量
まずは塗料を「何で希釈するか?」です。
水なのか弱溶剤なのか、強溶剤なのかetc.
塗料の希釈は決して悪ではありません。薄めて使えば・・・的な発想はとりあえず捨てて下さい。
塗料の中には水と反応するもの、シンナーで反応するもの、硬化材を混入させて反応させるものが数多ございます。
逆に反応硬化しないとカタログで謳っている性能は発揮されないのですからね。
次に希釈量です。希釈率という形で数値として示されています。
下塗り材、中塗り材、上塗り材それぞれで適した%が示されています。
基本的に何%~何%という範囲で示されているのでそれをしっかり守ります。
守らなければ・・・やはり減点です。
では塗布量についてです。
塗布量は「使用量」や「所要量」などとして明記されます。
「0.11~0.17kg/㎥」などと書かれています。
下塗り、中塗り、上塗りでそれぞれ違う事が多いので、それぞれで確認します。
後は「規格」「荷姿」と言った事項として材料1単位(缶)当たりの量(kg)を確認すると、
「規定量」を算出する事ができます。
規定量は簡単に言ってしまえば、その工事現場で使う材料の種類ごとの缶数です。
下塗り材3缶、上塗材5缶などとわかれば、適量塗られたのかがわかります。
くどいようですが、仕様が定められている以上規定量を守り、
必要量使用しなければなりません。
時間間隔
塗装工事では3回塗が基本となります。
外壁・屋根ならシーラー/フィラー・中塗り・上塗り。
鉄部なら錆止め・中塗り・上塗り。
となると塗り重ねる間隔が重要となります。
生乾きで塗ったりなどしたら、塗膜が形成される前に重ね塗るという事で、
これまた減点です。
塗装工事は層を重ねる事で長期にわたって保護機能を発揮する事ができます。
既定の時間を置かずに塗り重ねれば、「層を重ねる」とはとても言えません。
そこで見るべきは「塗り重ね乾燥時間」や「間隔時間」などの記載です。
前提となる気温によって時間の間隔が異なる事に注意してください。
材料によっては夏と冬とで結構な差異となる事もあります。
夏場なら2工程できたとしては冬場では無理だというような場合もあるわけです。
中には「~日以内」と言った具合に塗り重ねの期限を定めるものもあります。
鉄部の錆止めなんかが良い例です。概ね1週間以内に中塗りを終わらせなければ、
再度錆止めからやり直さないといけません。
「最終養生」というのは上塗り後、手で触れたりはしていけない時間を示します。
最終養生の時間経過後「仕上がった」と言っても良いでしょう。
その他の項目
さて、前述した項目は、注意していただきたい項目として特に詳細にご説明いたしました。
以下は重要ですが、さすがにプロを名乗る業者がおろそかにしたり、間違ったりはしないでしょう?
といった項目となりますので、ご参照ください。
適用下地・・・字のごとくその塗料を適用できる下地についてです。モルタル、サイディング(窯業系か金属系か)、ALCパネル、コンクリートなどなど、下地がどのような部材なのかで、例えば使用する下塗り材が変わります。
塗り回数・・・3回塗りなのか、それ以上の回数塗るのか。下塗りにしても通常1回ですが、吸い込みが著しい時は2回塗りますし、そもそも2回塗りを求める仕様もあります。
使用下塗り材・・・シーラーなのか、フィラーなのか、プライマーなのか。浸透性なのかそうでないのか等々。
塗装方法・・・ローラー塗り、刷毛塗り、吹付(エアレススプレー他)など。
まとめ
日本の物づくりは優秀です。
建築で使用される材料は日々進化を続け、優れた機能を持つものがいかに多いか。
ですが、そうした機能が遺憾なく発揮されるかどうかは別問題です。
建築は幾つもの建材を用いて、現場で手を加えて完了させるものです。
建材それぞれはいかにすぐれていようとあくまで中間財であって、最終財ではありません。
現場作業という名の「加工」が伴って初めて完成品となるわけです。
であるならば、注目すべきは「製造工程」にあたる部分なのではないでしょうか?
製造工程が杜撰ならいくら良い材料を使おうが、最高級品を使おうが見掛け倒しです。
慣性に流され漠然と工事をするのと、
手順を定め(マニュアル)、職人それぞれが仕様や理屈を理解したうえで「手順を守って」工事するのとどちらがいいでしょう?
高品質を維持するための仕組み、努力や取り組みこそ、100点満点への道なのだと思います。