軒天(のきてん)塗装
2022/06/04
軒天(のきてん)とは「軒の天井部分」の事を言います。
では「軒」とは何かと言えば、葺き下ろした屋根の躯体(くたい)から外側にはみ出した部分を指します。
躯体とは建物の構造部分。張り出したり、付属する部分を除いて、自立するための強度を備えた外壁周りの事を言います。
軒天は上の画像だと青〇の部分にあたり、破風(赤〇の部分)や鼻隠し(はなかくし:緑〇の部分)に接しています。
その天井部分という事で屋根周りに使う表現に思えますが、
庇や玄関屋根、バルコニー、そして階段の天井部分についても軒天と呼んでいますし、何なら廊下の天井などもこう表現したりします。
これと同じ個所を示す言葉に上裏(あげうら)があります。
下から見上げる部分と言う意味で、建築用語としてはどちらもよく耳にする言葉ですが、
「軒」という限定した箇所を含む表現に比べると汎用性が高い文字構成のため大規模修繕工事の内訳だとこちらが好まれるように思います。
軒天(のきてん)塗装と言うのは上述した軒天を塗装する事です。
一般的にエマルション系塗料が用いられ、素地がリシン吹きなら仕上げ塗料を二回塗り、
エントランスホールでよく見られるジプトーンなどのボード系ならシーラーを入れて、仕上げ塗料を二回塗りという仕様です。
N-90(日塗工という色見本帳の番号)など白系の艶消し塗料が使われ、艶有り塗料はほとんど使われません。
艶有り塗料を天井に塗ると光が乱反射してしまうからです。
天井の高さはだいたい2.3m程度。よほどの高身長でなければ床に立った状態では塗れません。
そこで、長柄(ながえ)という物を使います。
ローラーハンドルの柄の部分にはネジ穴(ナット状のもの)が空いており、
先端がボルト状の凸型をした棒をねじ込むと高い箇所も塗れるようになります。
頭上を見上げながらの作業のため、肩が凝りますが、脚立の上り下りに比べれば全然楽チンです。
たかが3~4尺程度の脚立でも、終日上り下りしていると足はパンパンです。
それと、ローラー塗り作業で飛沫が飛ぶと顔がペンキまみれになってしまうのも、
若き日のホロ苦い思い出です。
帰り道コンビニによると店員さんが驚いた顔をしていて、なんでだろう?と思いつつ帰宅。
お風呂でペンキの付いた自分の顔を見て恥ずかしくなる・・・という経験を経て、
軒天塗装でいかに顔を汚さず塗れるかを修行し始めるという・・・塗装屋あるあるでした。
かつては溶剤系の塗料が主流でしたが、時代と共に水性へとシフトし、
現在では溶剤系塗料はほとんど使わなくなりましたね。
「水性ケンエース」「ノキテンコート」など。
ただし、天井にシミや油、ヤニが目立つときは溶剤塗料を使う事もあります。
シミ止めシーラーと言うのもあるのですが、これを用いてもシミが止まらない事があるからです。
シミが止まってないとせっかく塗った白っぽい塗料にシミが浮き上がってきて変色してしまいます。
その点溶剤系塗料なら油ジミでも抑えてくれるからです。
では今回はこのへんで。。