鉄筋コンクリート構造の特徴と経年劣化で生じる症状
2022/05/30
鉄筋コンクリート造はRC造と表します。
Reinforced(強化した) Concrete(コンクリート)を略したものです。
一言で言えば「弱点を抱える二つの材が、互いの弱点を補う優れた長所を発揮して形作る構造」となります。
コンクリートは圧縮強度に優れるが引張強度がない。そして一度破壊されるとその強度は取り戻せない。
鉄筋はわずかに圧縮力に耐える力しかないが引張強度に優れている。
そこでコンクリートの中に鉄筋を配し、コンクリートにはない引っ張り力を負担する事で、
圧縮にも引っ張りにも耐えられる構造を作り上げます。
さらに、コンクリートで鉄筋を覆うメリットがあります。
コンクリートは強アルカリ性で、鉄筋に被さると「不動態被膜(ふどうたいひまく)」を形成します。
これは、金属表面の腐食作用に抵抗する酸化被膜の事で、鉄筋が錆びるのを防止します。
また、熱に弱い鉄筋を保護する役割も果たします。
まるでオシドリ夫婦のような相性の良さではありませんか。
内助の功で中から支える妻、矢面に立ち外側を守る旦那(現代では反対のケースもありますね)。
この関係が続く限り、家は安泰となるわけです。
コンクリートの中性化
ではこの関係に亀裂が走ったらどうなるでしょう?
文字通りひびが入ると水が差し、鉄筋が錆びてしまいます。
建物で言えば壁にクラックが入り、そこから入り込んだ水が鉄を錆びさせる。
あるいは外を守る旦那が心変わりして、守りが疎かになれば(留守がちになり)、
知らぬ間に関係が錆びついてしまう。
具体的にはコンクリートがアルカリ性から中性化してしまい、
その結果不動態被膜が破壊され、鉄筋の保護が無くなり、空中のわずかな水分にさえ屈してしまう=錆びてしまう。
ではコンクリートの中性化とはなんでしょう?
これはコンクリートを劣化させる原因の一つで、空気中の二酸化酸素に触れると生じる変化です。
コンクリートはセメントに砂、砂利、水を練り混ぜて固めたものです。
セメントの成分と水が化学反応を起こし(水和反応という)、多くの水酸化カルシウムを作り出します。
塗装の経年劣化などでコンクリートが空気中の二酸化炭素に触れると化学反応を起こし炭酸カルシウムと水へ変化する。
こうしてコンクリートのアルカリ性が低下する現象をコンクリートの中性化と呼びます。
中性化したコンクリートは当初の強度を保てなくなり、もろくなるなどしてやがて様々な不具合を生じます。
クラック、欠損、爆裂などの症状がまさにこれで、それぞれに対応した補修が必要となるのです。
つまり、コンクリートをいかに空気に触れさせないかが重要で、
鉄筋のかぶり厚さ(鉄筋を覆うコンクリートの厚み)を大きくしたり、
塗装などで表面を覆うなどして対応します。
また、いざ空気が触れても密実な(密度の濃い)コンクリートならば内部に浸透しにくく、
中性化の進行も遅くなるので、コンクリート打設時は水セメント比を小さくします。
定期的なメンテナンス
固いコンクリート壁で囲まれ安心して暮らしている私達ですが、
実はその壁が知らぬ間に脆くなっていて、鉄筋まで錆びている・・・。
こうした事はどこか遠い所で起きているのではなく、ごくごく身近な出来事なのです。
建築資材の多くは人工的に作ったものです。
自然物とは違い、本来の姿ではありません。
万物は本来の姿に戻ろうとします。
鉄は元々鉄鉱石であり、人の手によって鉄に姿を変えました。
けれど、自然は元の姿に戻そうと、錆びさせ、朽ち果てさせようとします。
コンクリートも同じこと。
セメント、砂、砂利、そして水へ戻そうとするあらゆる自然の力がかかり続けます。
逆に言えば、一度人が手を加えたものは、手を加え続けなければその姿を維持できません。
だからこそメンテナンスが必要となるわけです。
風雨にさらされたコンクリートは日々着実に脆くなり壊れていきます。
そうならないよう、表面をコーティングし、悪くなった箇所は補修する。
永く住まいと付き合うためにはこうした定期的なメンテナンスが必要なのです。