下地補修~浮き補修「原因」編~
2022/03/22
浮き補修について
躯体の一部が剥離し、浮いた状態になってしまう事があります。
打診棒と呼ばれる道具で叩くと周囲とは異なる音が響くためこの不具合を見つける事ができます。
剥離した状態を放置すれば落下の危険性があり、それを防ぐために行うのが「浮き補修」です。
接着力にすぐれたエポキシ樹脂を注入して剥離部をくっつける事から「注入工事」とも呼ばれます。
浮きはどうして起こる?
躯体が剥離する原因について考えます
前回に続きまたネタっぽい始まりじゃの。
しゃべり口調も変えるのが定番なのか?
予告通り今回は「浮き補修」についてじゃ。
冒頭で説明されているように部分的に浮いた状態になった不良個所についての補修となる。
何故浮いてしまったのかは幾つか考えられる。
クラックや穴から入り込んだ水が壁の内部でいたずらをし、欠落までいかなくとも、
かろうじて落下せずに済んでいる状態になってしまうというのが一つ。
建物の揺れやその他外力によって、部分的に破壊されてしまったような場合が一つ。
その他にも化学的な反応や、四季を通じた温度変化、外部からの衝撃なども要因となりえるの。
今、水による影響について触れたが、建物にとって水の影響は物凄く大きいものじゃ。
例えば水が蒸発すると体積は何倍になるか知っておるか?
水の体積変化による影響
水は固化しても、気化しても建物に悪影響を及ぼす可能性があります
ブ~。桁が全然違うわい。
水はとても身近なものじゃが、調べてみるとなかなかに面白い性質をもっておっての、
固体になると若干体積が増える。だいたい10%くらいと言われておる。
普通は固体になると体積が小さくなるものなんじゃが、
水は逆に増えてしまうという、少し変わった個性を持つ。
蒸気になるとえげつないぞ。なんと約1700倍にもなると言う。
一滴の水であっても1700倍に増えるのじゃからその影響力たるや言うの及ばずじゃ。
壁の隙間に水が入ると、冬場は凍って圧力増強。
夏場は蒸気になって圧力爆発。
ちと大げさな云い口になってしもうたが、
それだけ大きく作用しうるという事じゃ。
水は建物の天敵
水は建築物に悪影響を及ぼすことがあります
左様。水は建築物の天敵と言われるぐらいでな。
蒸気について言えば、
防水層に入り込めば膨れの原因となり、
そのまま放置すれば防水層の破断を引き起こす。
また、コンクリートはそもそも強アルカリ性の性質を持っておるのじゃが、
空気に触れると二酸化炭素の影響を受け「中性化」してしまう。
鉄筋は引っ張りに強い性質を持っおって、
多少の「耐圧縮力」と、高い「引張強度」を発揮する。
ただ、サビに弱いという弱点があり、
その弱点をコンクリートが補っておる。
コンクリートは高い圧縮強度を誇り、かつ鉄が錆びないよう保護する。
コンクリートは「強アルカリ性」の性質を持ち、
このコンクリートに覆われる事で鉄筋の周りに不動態被膜(ふどうたいひまく)が形成される。
この不動態被膜が錆の発生を防ぐのじゃ。
ところが、コンクリートが中性化すると、
不動態被膜が破壊・防錆機能が失われてしまう。
コンクリートの中性化自体、コンクリートの劣化を示す。
強度が落ちるとともに、鉄筋が錆びやすくなる。
そんな状態だと水が入らずとも空気中の水分だけで錆び付いてしまい、
「爆裂」という状態異常が発生する。
建物を構成する他の建材でも水の影響を受ける事はある。
例えば木。これなぞ何の対策もないまま水にさらされれば腐ってしまうわい。
建物表面の防水機能が低下して、壁や天井内部に水が入り込めば、
湿度が高くなり今度はカビ、雑菌と言った分解者まで繁殖しだす。
水への対処を怠ると、直接的にも間接的にも建築物を蝕んでしまうのじゃ。
だからこそ、外部に現れた不具合を、できるだけ早期に、
かつ状態に合わせて適宜メンテナンスする事が重要なのじゃな。
ついつい長話になってしまったから、
浮き補修の具体的な内容は次回という事にしよう。